2008年1月19日アーカイブ

ポルシェ・カイエンS トランスシベリア世の中にはたくさんの自動車外車とブランドがあって、フェラーリもランチアもマセラティもロータスもアストンマーチンもそれぞれいいんだけど、理屈ぬきに「ここのメーカーのやることは全て正しい」と、あらゆる客観的なネガティヴファクターを無視して恍惚とした表情で言い切れるのは、僕にはポルシェだけである。

これをポルシェ原理主義と言う。

しかしポルシェが、ボクスターの成功で勢いに乗ってRV車のカイエンを出したときは正直わが目を疑った。

ポルシェ・カイエンS トランスシベリア「これはポルシェが出すべき車なんだろうか?」と思ってしまったのだ。ドイツのメーカーでこういうのはむしろBMWあたりに任せておけばいいんじゃないかと思ってたのだが、よくよく考えると、BMWにして
もメルセデスにしてもアウディにしても、近年スポーツカー寄りの車種に力を入れているのだから、むしろポルシェがこういうRVに参入するのは、反撃とも言える必然なのだという結論に達することができた。なんたってわたくしポルシェ原理主義者ですから。


しかしそこはポルシェ。ただRVを出したわけではなく、これでラリーに出ることにしたのだ。これまでもポルシェがプライベーターでのラリー参戦はけっこうあったわけだが、ワークスとしてのラリー参加はたぶん初めてのはずだ。しかも出たラリーはトランスシベリア2007である。8月2日にモスクワをスタートし、シベリア大陸を横断して同月17日にモンゴルのウランバートルでゴールするこのラリーは、距離が約6.200キロあり、夏場とは言えシベリアの大地あり砂漠あり山あり谷あり川あり道なしってコースを突っ走るのだから、並大抵のことじゃない。もちろんカテゴリーとしては「ラリー」ではなく「ラリーレイド」である。

ポルシェ・カイエンS トランスシベリア
カイエンS・トランスシベリアと名づけられたこのモデルは、26台製作されたというから、当初ホモロゲーション関係かな?と思ったら、「全部出場するため」に製作されたどうである。まさしく「カイエン軍団シベリアを行く」だ。

ベース車両はもちろんカイエンのS。ノンターボのモデルで、NA4.8リッターの385馬力。最終減速比はローギヤード化され、リヤディファレンシャルにはロック機構が付き、ただでさえ頑丈で大型なのに、さらに強化と大型化されたアンダーフロアパネルは、防水を本気で考えているのだろう。何せそこらの小川を渡るのとはわけが違う。
下手したら沈むし。

ポルシェ・カイエンS トランスシベリア
その徹底した力の入れようと、26台も寄ってたかって参加したものだから、去年のトランスシベリア・ラリーはこのカイエンSトランスシベリアが1.2.3位を独占し、上位10台のうち7台までを独占し、アクシデントで数台がリタイアした他は、全車完走を遂げるという快挙までやってのけた。

RVという車に、アレルギーとまでは言わないまでも、ゆるやかに敬遠する気持ちを持つ人は少なくない。しかし不思議とその車が、ラリーに出ましたとか、レースで勝ちましたみたいな実績を身につけると、その反動でゆるやかに欲しくなってきてしまうのだ。

ポルシェ・カイエンS トランスシベリアポルシェがこの車で何を狙っているのかと言うと、たぶんカイエンのカレラを作りたかったんじゃないかと思う。モータースポーツにおける実績は、公道での走りでも満足させることを約束する。これは911じゃない。しかしまさしくポルシェそのものなのであることを、奥さんと子供のいるお父さんに訴求するためのテコ入れなのだ。

「これはハンパなRVじゃないんだよ」
それを宣言するためのトランスシベリア参戦だったはずだ。


なので、このカイエンSトランスシベリアは、現在あるカイエンのラインナップ3台の上位車種として、きっと市販されると思う。EUのRV市場において、BMWやアウディと言ったライバルに対峙させるカイエンに、東欧のおそろしく過酷なラリーの名を冠するのは、実にポルシェらしい宣戦布告なのだ。


ポルシェ・カイエンS トランスシベリア
 

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